相続関係 親子の縁を切れるのか
親子の関係は非常に濃密でデリケートです。
いったん関係がこじれてしまうと決定的に修復が不可能になってしまうこともあるでしょう。
「自分の遺産を子に譲りたくない」とおっしゃられる方もいらっしゃいます。
今回は法律的に「親子の縁を切れるのか」という問題について、遺産相続の専門家である弁護士が考察し、解説します。
親子関係 「縁を切る」ことはできるのか
日本の法律では、原則として実親と実子の関係を切ることはできません。「縁を切る」「勘当だ!」と宣言しても法的効力はありませんし「絶縁状」「縁を切ります」などの書面を作成しても無意味です。
例外的に子どもが小さいとき(15歳未満)に「特別養子縁組」をした場合、相続権を含めて「縁を切る」ことができます。これ以外の方法で親子の縁を切るのは、ほぼ不可能と考えましょう。また特別養子縁組をした場合でも、事情により親子関係が復活する可能性はあります。
親子であれば、互いに相続権が認められますし、どちらかが生活に困ったときには扶養の義務も発生します。戸籍にも「親(父、母)」「子(長男、長女など)」と記載されます。
こうした親子関係を完全に断ち切るのは難しいと考えましょう。
相続権を奪うことは可能
親子には互いに相続権が認められるので、親が死亡すると子どもは親の遺産を相続できるのが原則です。
ただし相続権については、一定まで制限できます。完全に親子の縁を切れなくても、遺産相続であれば避けられる可能性があるので知っておきましょう。
折り合いの悪い子どもへの相続を避けるには、「遺言書」の作成が有効です。
たとえば仲の悪い長男に相続させたくない場合、遺言書に「すべての財産を次男Aに相続させる」「長男には何も相続させない」などと書いておけばよいのです。
遺留分は認められる
ただし親子の場合、遺言書を書いても完全に相続権を奪うのは困難なので注意しましょう。親子には「遺留分」が認められるからです。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる「最低限度の遺産取得割合」。子どもには最低限の「遺留分」が保障されるので、遺言書で「何も相続させない」と書いても、最低限遺留分相当額は取り戻せます。
たとえば「すべての遺産を次男へ相続させる」と遺言したら、長男が次男へ遺留分侵害額請求」をして、トラブルにつながってしまうリスクも発生します。
遺言書を作成するときには、遺留分にも配慮すべきといえるでしょう。
生前の遺留分放棄は難しい
生前に遺留分を放棄させることができれば、相続させたくない相続人から完全に遺産相続権を奪える可能性があります。
ただ生前に遺留分放棄させるのは簡単ではありません。家庭裁判所へ申し立てて許可を得る必要があります。
家庭裁判所では、遺留分放棄に合理的な理由があるかどうかを審査されますし、遺留分放棄に代わる補償を求められるのが通常です。
「相続人と仲が悪いから相続させたくない」というだけでは生前の遺留分放棄は認められにくいので、注意しましょう。
相続欠格者、相続人廃除について
以上のように、子どもと親子の縁を切って完全に相続権を奪うのは極めて困難です。
ただし例外的に子どもが「相続欠格者」になれば、子どもは自動的に相続権を失います。
相続欠格者になるのは、相続人が遺言書を偽造したり破棄したり無理矢理書かせたりした場合、被相続人を殺害した場合などです。
また相続人が被相続人を虐待したり重大な非行を行って迷惑をかけたりした場合、被相続人が家庭裁判所へ「相続人廃除」の申立てをすることにより、相手の相続権を奪える可能性があります。
子どもの非行に困っている方などであれば、相続人廃除の申立を検討する余地があるでしょう。
相続権が存在することを前提に考えてみよう
通常一般のケースでは、いくら遺言書に書いたとしても、被相続人の意思のみによって、相続権を喪失させることは困難です。
それどころか、遺言書が元で親族トラブルになってしまうことも考えられます。
「相続=争族」とい言われる所以です。それほど相続はトラブルがつきものなのです。
「子どもの相続権は失われない」ことを前提に、以下のような方法を行っておきましょう。
遺言書を作成しよう
遺言書にはどのように遺産を分割するかを書くのかは自由です。
子どもの遺留分を侵害する場合でも、遺留分権者がそれを行使しなければ、遺言書通りに相続が実現します。遺留分には「相続開始と遺留分侵害を知ってから1年間」という時効もあるので、必ずしも遺留分侵害額請求されるとは限りません。
こういった可能性を考えると、遺言書に自分の希望する通りの内容を記載するのも一つの方法といえるでしょう。
ただし遺留分を侵害するとやはり遺留分トラブルになる可能性があるので、リスクを避けるなら遺留分に配慮した内容にするようお勧めします。
実際の相続前に専門家に相談しよう
相続問題が起きる前に、遺言書の内容を含め、一度専門家に相談してみましょう。特に遺留分を侵害する可能性がある場合、死後にどのような展開が予想されるのか等を知っておくと、関係者にとって有益です。
また、身内だけですとどうしても感情的になってしまいがちですが、第三者が立ち会うことで、冷静に状況を見ることも可能となります。弁護士を遺言執行者にしておけば、遺言内容をスムーズに実現しやすくなるメリットもあります。
良好な関係は相続トラブルを減らす
相続人同士はもちろん、相続人と被相続人の良い関係は、将来的な相続トラブルの可能性を減らす大切なことです。
「関係が悪くなって長年会ってない子どもがいる」などお子様との関係が疎遠でも、必ず相続の時に関わってくるのが親子関係。お心当たりがある方は、一度専門家にご相談してみてください。
弁護士法人法律事務所DUONは、多くの相続問題を解決して参りました。
遺言書の作成方法のアドバイスもしております。初回相談料は無料とさせて頂いておりますので、相続関係で不安や悩みのある方は是非とも一度、ご相談ください。