死亡保険金は相続財産の対象外!だが例外も
被相続人が亡くなると、法定相続人で遺産分割協議が行われます。この際にしばしば問題になるのが「生命保険の死亡保険金」です。
相続すべき遺産よりも保険金の方が高額だった、なんてことは意外とあります。
死亡保険金は受取人の財産
生命保険の被保険者が死亡した場合の受取人は必ず決まっています。通常は、保険契約者が、契約時に受取人を指定します。
そして、保険金は受取人の固有財産ということになり、法律上は、原則として分割協議の遺産とは別に扱われます。
分割遺産より死亡保険金の金額が大きいケースも
生命保険の死亡保険金は比較的高額な場合が多いです。1,000万円から、多い場合は数千万に及ぶこともあります。
これに比べて、他の遺産がとても少ない場合があります。中には借金が残っていたのでマイナスだ、ということで相続放棄の手続きを考えている場合も少なくありません。
例えば、すでに母が他界している状態で被相続人である父が亡くなった場合
- 法定相続人が長男、長女、次男の3人
- 分割する遺産が300万円
- 死亡保険金が1,000万円(受取人は長男)
という条件だった場合は、
- 長女と次男は100万円ずつ相続する
- 長男は100万円の相続分に加え、死亡保険金1,000万円を受け取る
ということになります。ちょっと不公平な感じもしなくもないですね。さらに、長女が親の介護をしていたなどの場合は、その不公平感はさらに強くなると思います。
死亡保険金が特別受益とみなされる判例も
あまりにも分割すべき遺産に比べて死亡保険金の金額が大きい場合は、死亡保険金を特別受益に準ずるものだとされた判例があります。
最高裁判所第二小法廷決定、民集 第58巻7号1979頁
【判決要旨】
相続人のうちの一人が死亡保険金の受取人であった場合、養老保険契約(貯蓄型で満額時に死亡保険金と同額の保険金が支払われる保険)をその相続人が取得する権利がある。
また、民法603条1項に基づき、遺贈、または贈与に関わる財産としてみなされない。
しかし、
- この保険金の金額、また金額の遺産の総額に対する比率(他の遺産に比べて著しく保険金の金額が大きいなど)
- 保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係(保険金の受取人は長男だが、被相続人の介護をしていたのが長女だった、など)
- 各相続人の生活実態等の諸般の事情
これらを総合考慮して、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし、到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、特別受益に準じて持戻しの対象となる。
このように、著しく不公平であると判断された場合は民法903条を類推適用し、特別受益として判断されることになりました。ちなみに民法903条にはこのように規定されています。
民法903条
(特別受益者の相続分)
- 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
- 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
- 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。
▼特別受益についてはこちらをご覧ください
遺産相続トラブル多発!「寄与分」「特別受益」って?
この後、この判例を基に死亡保険金が特別受益とされた事例が幾つかあり、今後も同様のケースは増えていくものと思われます。
遺産の対象に悩んだらご相談ください
このように、本来は遺産分割対象外であるものが特別に認められるケースもあります。
しかしこうなる前に、親族同士が裁判で争うのはできるだけ避けたいですし、あらかじめ法律のプロが判例を基にアドバイスを行うことで、結果的に円満に収まり、後々の良い関係を継続していくこともできます。
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