相続放棄を弁護士に依頼するメリット|他士業との違いも詳しく解説
相続放棄とは、故人である被相続人の財産を、プラス・マイナス問わずに放棄することを意味します。相続放棄の手続き自体は、必要書類と整えて家庭裁判所に提出するものであり、調停や訴訟と比較すると簡潔な手続きです。
相続人自身で手続きをすることもできますが、弁護士に相談するメリットはとても大きいことはご存じでしょうか。
今回の記事では、相続放棄を弁護士に依頼するメリットについて、詳しく解説します。他士業との違いにも触れますので、ぜひご一読ください。
相続放棄は増えている?手続きの注意点とは
相続放棄は、被相続人の財産を放棄するものであり、大切な預貯金や不動産なども放棄します。では、近年相続放棄は増えているのでしょうか。この章では相続放棄の増加や、手続きの注意点を解説します。
相続放棄は増加の一途をたどっている
相続放棄は、現在増加の一途をたどっています。裁判所の司法統計によると、相続放棄の申述受理の件数を見てみましょう。令和2年度の家庭裁判所における新規事件受理件数における相続放棄は23万4732件、10年前の平成22年の同統計は16万293件と、この10年間で大きく増加していることが分かります。
(出典・令和2年 家事審判事件の受理,既済,未済手続別事件別件数 全家庭裁判所および平成22年家事審判事件の受理,既済,未済手続別事件別件数 全家庭裁判所)
また、昨年相続放棄の手続きは、第一審家事審判事件の中でも最も多くなっています。令和4年の新受事件数は、相続放棄事件が最も多く、次いで、後見人等に対する報酬付与事件、後見等監督処分事件、子の氏の変更事件の順となっているのです。
参考URL 令和4年 司法統計年報概要版(家事編)
なぜ相続放棄は増加しているのか
では、大切な財産を放棄する相続放棄は、なぜ増加しているのでしょうか。増加の背景にはさまざまな要因があると考えられていますが、少子高齢化の加速によって、相続人に「生前から被相続人と交流が少ない人」がなることが増えていることが挙げられるでしょう。また、管理しきれない空き家の放棄を希望するケースもあります。
相続放棄を希望する方の中には、借金の放棄を希望する方も多く、親が遺したローンの放棄をする子もいます。
相続放棄は誰に相談できる?
相続放棄は、借金だけを放棄することはできないため、被相続人が所有していた住まいなどの財産も放棄する必要があります。また、法定単純承認とみなされないように、慎重に相続放棄を進める必要があるため、法律の専門家に相談をすることがおすすめです。では、実際に相続放棄を行う場合には、誰に相談できるのでしょうか。
弁護士
弁護士は相続全般に関するアドバイスができるため、相続放棄に関するご相談にも対応しています。他の相続人とのトラブルや、相続財産清算人の関する相談なども可能です。代理人として債権者への対応などもまとめて依頼できます。
司法書士
相続放棄は司法書士への相談もできます。必要書類の作成や戸籍類の収集などを行っています。相続放棄の申述書の作成も可能です。
税理士
相続を専門としている税理士の場合は、相続放棄の相談ができる場合もあります。相続税のシミュレーションを行った上で、放棄を決断したい場合には税理士に依頼することも検討できるでしょう。ただし、相続放棄の手続き自体を税理士が行うことはできません。
行政書士
相続を扱う行政書士も多いため、専門知識が豊富な方は多いですが、遺言書の作成とは異なり行政書士は相続放棄の書類を作成することはできません。ただし、相続手続きの一環として戸籍の収集のみを依頼することは可能です。
相続放棄を弁護士に依頼するメリットとは
相続放棄の相談先は、主に弁護士もしくは司法書士を選択するケースが多いですが、弁護士を選ぶメリットとはどのようなものでしょうか。この章では、弁護士に依頼するメリットや、司法書士への依頼との比較を紹介します。
相続放棄を弁護士に依頼するメリット
相続放棄を弁護士に依頼するメリットは、以下4つが挙げられます。
①法定単純承認に関するアドバイスを踏まえながら相続放棄を進めてくれる
相続放棄は、一見簡単そうに見えますが、慎重に手続きを進める必要があるものです。特に法定単純承認に関して注意をする必要があります。
たとえば、遺品整理でも形見分けできるものと、そうではないものがあります。弁護士にしっかりとアドバイスをもらった上で、相続放棄へと進むことがおすすめです。
②相続放棄が望ましいのか、その他の手続きと比較しながらアドバイスができる
相続放棄を検討される方の中には、借金を理由に挙げる方が多いですが、そもそも相続放棄が本当に望ましいのかも検討が必要です。限定承認と比較したり、本当に支払う義務のある借金なのか、丁寧に分析する必要もあります。弁護士なら紛争となる可能性がある相続人や、債権者への対応も含めて、おまかせいただけます。
③期間の伸長や、相続財産清算人に関する対応も可能
相続放棄は原則として、「自己のための相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に行う必要があります。この期間は熟慮期間と言います。被相続人の死去をすぐ知る同居の家族なら、基本的に死去から3か月以内に、早期を完了させる必要があるのです。
しかし、債務総額が分からない場合や、相続放棄を検討する理由がある場合、3か月以内では決断できないこともあります。このようなケースでは、熟慮期間を伸ばせるため、弁護士に相談することがおすすめです。また、相続人全員が財産を放棄し、相続財産清算人の申立てが必要なケースも、弁護士なら対応できます。
④熟慮期間を超えている場合の代理人対応も可能
相続放棄の熟慮期間を超えてしまった後に、やむを得ない事情で相続放棄を目指す場合も、弁護士に相談が望ましいでしょう。3か月を超えてから高額の債務が発覚した場合などでは、相続放棄が認められる可能性があります。
司法書士と弁護士、依頼がおすすめされるケースとは
相続放棄の対応には、弁護士以外にも、書類作成にも対応できる司法書士が検討できます。では、司法書士と弁護士では、どちらの依頼がおすすめでしょうか。
司法書士がおすすめできるケース
司法書士は紛争対応ができません。しかし、書類の作成や相続放棄に関するアドバイスは可能です。代理人として裁判所へ書類の提出を行うことはできませんが、その分弁護士よりも費用が安く設定されていることがあります。
被相続人に見るべき財産が無く、相続人間のトラブルがない場合には、司法書士に依頼し、ご自身で相続放棄の手続きを行うこともおすすめです。
弁護士がおすすめできるケース
弁護士がおすすめできるケースは、弁護士に相談するメリットにも触れた通り、債権者への対応が必要とされたり、相続人間でトラブルとなっている場合などです。また、弁護士の場合は代理人として戸籍の収集、書類の作成や提出、完了に至るまで一元的におまかせいただけます。
多忙であったり、高齢者で家庭裁判所に行くことが難しい場合など、煩わしい手続きをまとめて依頼したい場合にもおすすめです。
相続放棄で知っておきたいこと
相続放棄には、今回の開設以外にも、固定資産税への対処法や生命保険の受取などについても知っておくことがおすすめです。詳しくは以下をご確認ください。
- 相続放棄について
- 相続放棄後に取り立てや固定資産税の督促が来たときの対処方法!弁護士解説
- 相続放棄しても生命保険を受け取れるのか?弁護士が解説
- 相続放棄しても代襲相続は起きない! 相続放棄と代襲相続の関係を弁護士が解説
- 3カ月を過ぎた相続放棄が認められる場合とは!期限を延長する方法は?弁護士が解説
まとめ
この記事では、相続放棄を弁護士に依頼するメリットについて、司法書士をはじめとする他士業とも比較しながら詳しく解説しました。
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