相続トラブル増加中|裁判所データで相続の実態を弁護士が解説

相続が発生したら円満に手続きを進めたいものですが、時には遺産の分割方法などを巡ってトラブルになることがあります。では、現在日本における相続トラブルの現状とは、一体どのようなものでしょうか。

これから相続を迎えるにあたって、家族同士の言い争いを避けるためにも相続トラブルの実態を押さえ、対策を始めましょう。本記事では裁判所が公表している「令和4年 司法統計」のデータを用いながら、相続トラブルの実態を詳しく解説します。

相続トラブルは増加している?令和4年 司法統計のデータとは

高齢化社会を突き進む日本では、多くの方が家族のご逝去によって相続を経験しています。相続には預貯金口座の解約や不動産の相続登記、相続税申告などさまざまな手続きが必要となりますが、相続人間のトラブルによって手続きが思うように進まなくなるケースも、決して珍しくありません。では、相続トラブルは増加しているのでしょうか。

家庭裁判所に申し立てられた令和4年の事件総数は、114万7682件であり、令和3年と比較して0.2%の減少を示していますが、しかし、相続に関する事件は増加中です。

相続放棄申述事件

令和4年26万0497件
令和3年25万1994件
令和2年23万4732件
令和元年22万5416年

令和元年~令和4年のデータを見ると、相続放棄に関する申述は年間1万件ベースで増加しています。

遺言書の検認事件

令和4年2万500件
令和3年1万9576件
令和2年1万8277件
令和元年1万8625件

遺言書の検認事件も増加しています。この背景には、遺言書の作成が一般の方にも広まっており、検認が必要な遺言書も増加傾向にあると考えられます。

遺産分割調停事件

令和4年1万4371件
令和3年1万3564件
令和2年1万2757件
令和元年1万3801件

相続人間で遺産分割協議が決まらない場合は家庭裁判所で遺産分割調停を行います。この件数も令和3~4年は増加が続いています。

参考データはすべて以下より
最高裁判所 令和4年 司法統計 年報概要版

遺産総額に関わらず相続はトラブルになる

上記のデータでは、遺産分割協議以外の相続問題についても、家庭裁判所に持ち込まれる事件数は増加傾向にあるとわかりました。相続トラブルは「遺産」をめぐって家族同士が争うイメージが強いですが、実はそればかりではありません。

では、相続トラブルには具体的にどのような問題があるでしょうか。この章で主なトラブル例を紹介します。

もともと家族の仲がよくない

法定相続人になれるのは、被相続人の配偶者・子や孫(直系卑属)・両親や祖父母(直系尊属)・兄弟姉妹に限定されます。つまり、非常に近しい関係の方々が相続手続きを協力し合うことになります。

もともとの家族仲がよくない状態のとき、遺産総額は少額であっても意見が対立してしまい、遺産分割協議がまとまらないことがあります。

対象となる遺産が換価しにくい

遺産に含まれるのは、現金や預貯金、有価証券だけではなく不動産も含みます。預貯金や有価証券は換価しやすく、相続人で仲良く分けることが可能です。しかし、不動産は時に売却が難航してしまうことも少なくありません。換価しにくい遺産の場合、以下のようなトラブルが発生しています。

  • 長く暮らした実家は売りたくない相続人と、売って換価して欲しい相続人で対立する
  • 代償金を支払って不動産は守りたいが、代償金が用意できない
  • いらない不動産ばかりで、相続人同士で押し付けあう

介護をした人、しなかった人で対立する

高齢の両親を介護していた子、すでに実家を出て独立している子が相続人となる場合、介護をしていた方は重い負担をこなしていた経緯も踏まえて、「多く遺産を欲しい」と主張することがあります。

しかし、介護負担があったとしても法定相続分には影響しません。多くもらうためには「寄与分」を主張する必要があります。

実は被相続人に借金があった

被相続人の死去後に、家族が知らなかった借金が見つかるケースも少なくありません。債務を相続人が承継しないためには、相続放棄を選択することが考えられますが、特定の債務のみを放棄することができないため

その他

この他に、被相続人と生前同居していた相続人が、被相続人の財産を使い込んでいたと疑われるケースや、特定の相続人に生前贈与が行われており、もらっていなかった相続人との間で対立することもあります。

相続トラブルは回避できる?知っておきたい対策法とは

相続トラブルに直面すると、家族関係が悪化してしまったり、さまざまな相続トラブルの期限に間に合わなくなるリスクもあります。家庭裁判所で調停や審判という方法にて解決を目指す場合、協議よりも解決時間は長くなり、長期化すると数年かかってしまうことも珍しくありません。では、相続トラブルを回避するためには一体どうすればよいでしょうか。

生前から相続の方針を家族で話し合う

家族が協力し合って相続問題を乗り越えていくためにも、生前から相続の方針について話し合いを重ねておきましょう。たとえば、親から子にこのような伝言を残しておくと、相続トラブルが回避できることがあります。

  • 相続時には介護をしてくれている兄に財産を多くあげてほしい。すでに別居している弟にも財産は残すから、配慮してほしい
  • 一緒に暮らし、先祖の住まいを守ってくれる長女に実家は残したい
  • 家族仲良く相続手続きをしてほしい

親から子へなど、相続への思いを伝えておくと実際の手続き時にもトラブルが起きにくくなります。

手続きに困らないように、エンディングノートや遺言書を作成する

相続時には遺産分割を巡って家族が争うだけではなく、被相続人の財産の調査に難航してしまうことがあります。しかし、生前には家族に知られたくない預貯金や有価証券がある方もいるでしょう。そんな時は、相続に備えて生前に「エンディングノート」や「遺言書」を作ることがおすすめです。

エンディングノート

法的な効力はないが、書式は自由、自分で簡単に作成できる。かかりつけの病院や投薬内容、死後に気がかりなことなど、遺言書よりも気軽にメモできる。

遺言書

遺言書がある場合、原則遺産分割協議よりも優先される。内縁の方やお世話になった団体などに財産を残すことも可能。法的な効力がある分、正しく作成していなければ無効となるおそれもある。費用はかかるものの、公証役場で保管され安全性が高い「公正証書遺言」がおすすめされる。

相続トラブルに直面したら|まずは弁護士への相談を

相続に関する困りごとには、弁護士だけではなく司法書士や税理士、行政書士なども対応しています。しかし、もしも相続トラブルに直面したら、まずは弁護士に相談されることがおすすめです。その理由は以下です。

早期の解決を目指せる

遺産分割協議がまとまらず、時間が経過してしまうと相続税申告が難しくなるおそれがあります。相続税申告は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に行う必要があり、遺産分割協議がまとまっていない場合は、「法定相続分を各相続人が取得している」と仮定して申告をする必要があります。申告期限は延長されません。

早期の解決を目指すためには、交渉に実績のある弁護士に相談・依頼することがおすすめです。なお、交渉がまとまらない場合、そのまま調停や審判についても弁護士なら対応できます。

代理人として手続きを任せられる

遺産分割協議だけではなく、弁護士は相続放棄などの手続きについても代理人として進めることが可能です。相続放棄はご自身で申述することも可能ですが時には債権者への対応をせざるを得ない場合があります。複雑な手続きも任せられるため、残された家族は安心して遺品整理などに集中できます。

まとめ

この記事では、日本における相続トラブルの現状について、裁判所の司法統計に触れながら詳しく解説しました。相続トラブルは遺産をめぐるものだけではなく、相続放棄などの問題も含んでいます。相続手続きにはさまざまな期限もあるため、トラブルに悩んだらまずは弁護士にご相談ください。

弁護士法人法律事務所DUONでは、相続に関する初回相談を無料で実施していますので、お気軽にご利用ください。

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