遺言書の作成件数は増えている?公正証書遺言や検認数などデータを検証!

高齢化が進んでいる日本では「相続対策」に関心を持つ方向けの広告も増加しています。弁護士だけではなく、税理士や司法書士、金融機関や不動産会社なども積極的に相続対策をアピールしているため、広告が目に留まる方も多いのではないでしょうか。

相続対策としては「遺言書」の作成も広く知られています。相続に関心を持つ方も増えている今、遺言書の作成件数は実際に増えているのでしょうか。そこで、本記事では遺言書の作成件数に注目し、公正証書遺言や検認数なども詳しく解説します。

遺言書の種類とは

遺言書の作成件数に入る前に、まずは「遺言書の種類」についてこの章で詳しく解説します。

遺言書の主な種類は3つ

遺言書の種類は主に以下の3つ挙げられます。普通方式遺言と呼ばれる遺言書の作成方法です。

遺言書の名称主な特徴
・自筆証書遺言
  • 自分で作成できるが無効になりやすい
  • 自筆証書遺言書保管制度を利用しない場合は検認が必要
  • 費用がかからない
・公正証書遺言
  • 公証人が関わるため無効になりにくい
  • 検認が不要だが証人は必要
  • 文字が書けなくても作成できる
・秘密証書遺言
  • 遺言内容は亡くなるまで知られない
  • 検認が必要
  • 証人が必要、無効になりやすい

この他に「特別方式遺言」と呼ばれる遺言書の作成方法もあります。特別方式遺言は死が目前に迫っている状態の方が作成する遺言書で、危急時遺言と隔絶地遺言がありますが一般的に広く活用されているものではありません。

遺言書の作成件数とは?自筆証書遺言と公正証書遺言に注目

この章では作成遺言書の作成件数について、作成される方が多い自筆証書遺言と公正証書遺言に注目し、詳しく解説します。

自筆証書遺言書の作成件数

自筆証書遺言は自分で作り、自分で保管できるため年間の作成件数が把握できるものではありません。しかし、指標にできる数字が2種類あります。

① 自筆証書遺言保管制度の利用状況数

自筆証書遺言は法務局で保管することもできるようになりました。この制度は令和2年に始まったもので「自筆証書遺言保管制度」と言います。本制度を利用すると検認は不要です。法務局での保管数は公表されています。

  • 令和5年の1月~12月に保管申請された自筆証書遺言の総数は19,336件
  • 令和4年は16,802件
  • 令和3年は17,002件

上記のとおり、本制度を活用した保管数の最新統計は、前年度・前々年度を上回る結果となっています。

② 家庭裁判所における検認数

司法統計も参考にできます。

  • 令和5年の検認数は22,314件
  • 令和4年は20,500件
  • 令和3年は19,576件

検認は死後に行われる手続きのため1年間に作成された総数とは言えません。ただし、検認数は10年前の16,708件と比較しても約1.34倍に増加しています。

参考URL  
① 法務省民事局 遺言書保管制度の利用状況
② 裁判所 令和5年 司法統計年報(家事編)  

公正証書遺言の作成件数

公正証書遺言の作成件数については日本公証人連合会が作成件数を公表しています。詳しくは以下です。

  • 令和5年 118,981件
  • 令和4年 111,977件
  • 令和3年 106,028件

公正証書遺言の作成件数は上記のとおり年々増加しています。特に以下で挙げる過去10年間の数字を見ると令和5年が最も多くなっており、遺言書への関心の高さもうかがえます。全体の傾向を見ると、毎年約11万件程度で推移しています。

平成26年104,490件
平成27年110,778件
平成28年105,350件
平成29年110,191件
平成30年110,471件
平成31年(令和元年)113,137件
令和2年97,700件
令和3年106,028件
令和4年111,977件
令和5年118,981件

引用URL 日本公証人連合会 令和5年の遺言公正証書の作成件数について

死亡者数を照らし合わせると遺言書の作成は増えている?

自筆証書遺言の保管数や家庭裁判所における検認数、公正証書遺言の作成件数は増加していますが、実際に遺言書の作成は増加していると本当に言えるでしょうか。上記の統計をまとめると、保管制度を活用した自筆証書遺言と公正証書遺言で少なくとも毎年約13万件以上の遺言書が作られています。そこで、国内の死亡者数と遺言の利用者数を比較してみましょう。

厚生労働省は「人口動態統計月報」と呼ばれる統計を発表しており、死亡者数を把握することができます。詳しい死亡者数は以下です。

  • 令和5年度 1,575,936人
  • 令和4年度 1,568,961人
  • 令和3年度 1,439,856人

この数字に対して、最低でも13万件程度の遺言書があると考えると、遺言書の作成は令和5年で約8.3%、令和4年も同%で、令和3年度は約9%です。こう見ると、実は死亡者数に対して遺言書の作成率はさほど高くはなく、1割にも達していません。また、増加はしておらずほぼ横ばいで推移していると言えます。

参考URL 厚生労働省 人口動態調査

遺言作成件数がなかなか増えない理由とは?

死亡者数が年々増加しているにもかかわらず、遺言書の作成件数が伸び悩む理由には一体どのような事情が考えられるでしょうか。この章で詳しく解説します。

遺言書を書くほど財産を持っていない

遺言書は「財産が多い人」が残すものというイメージが強いため、自分が持っている財産はおそらく多くない、と感じている方は遺言書を書かない傾向があります。

家族が仲良く遺産分割すると思っている

相続は自身が亡くなった後に始まるものです。そのため「家族が好きにしてくれたらよい」と思っている方も多いでしょう。特に家族関係が良好な場合は、遺言書を残すまでもない、と思う人は少なくありません。

縁起が悪い

遺言書は死を意識しながら残すもののため、縁起が良くないと考える人もいます。また、死ぬ間際に残すものと思っている人も多く、遺言書のしくみを詳しくは把握していない方も少なくありません。

今こそ遺言書を作ろう|遺言書作成のメリットとは

遺言書の作成は、単純に「誰にいくら残すのか」だけを書き残すものではありません。遺言書はあなたの思いをしっかり次世代に託すためのお手紙です。しっかりと法的アドバイスを受けながら作ることで、大切な財産を承継させることができます。

遺言書を残すメリットとは

遺言書には多くのメリットがあります。詳しくは以下のとおりです。

遺産分割協議が不要となる

遺言書がある場合、原則として遺産分割協議が不要となるため、相続人同士が協議をしなくてもスムーズに財産の受取が可能となります。相続人同士の面識が乏しい場合や、対立しそうなケースでも、遺言書があれば回避できるのです。

相続人以外にも財産を残せる

遺言書は法定相続人以外の方にも財産を残すことができます。たとえば、内縁関係の方や孫、同性婚パートナー、ボランティア団体やお世話になった友人への遺贈も示すことが可能です。(※孫は相続人になるケースもあります)

遺言書がない相続は法定相続人が財産を相続するため、内縁の方や同性パートナーに財産を残すことができません。しかし、遺言書があれば大切な自分の財産をこうした方々へ遺せます。ただし、法定相続人以外の方が財産を受け取る場合は、相続税が2割増しになることや、相続税申告の基礎控除の人数には含まれないことも知っておきましょう。

相続人の廃除や、遺言執行者の指定なども可能

遺言書を作る場合は、特定の相続人を「廃除」することもできます。この方法は生前に相続人が被相続人に対して虐待などを行ったため、相続権を失わせる方法です。廃除は要件が厳しいため、弁護士に相談しながら作成することがおすすめです。なお、遺言執行者も必要となります。

また、相続人廃除以外でも、多くの財産を分配する場合などのケースで円滑に手続きを進めてほしい場合には、遺言執行者を遺言書の中で指定することも可能です。この他にも多くのメリットがありますので、気軽にお尋ねください。

まとめ

この記事では遺言書の作成件数について詳しく解説しました。遺言書には多くのメリットがありますが、浸透率はまだまだ高いとは言えません。この記事をきっかけに、まずは気軽に弁護士へ相談してみませんか。弁護士は相続トラブルにも日々対応しており、どのような遺言書を残すと家族のトラブルを避けられるか、多くの知見を有しています。円満な相続を目指した遺言書作成をご提案できますので、お気軽に弁護士法人DUONへご相談ください。

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