【何歳から相続を考える?】相続人の平均年齢などのデータから適切時期を解説
いつか迎える「相続」は、何歳から考えることが適切なのでしょうか。親が所有する不動産が増えた時や、退職を迎える時期など、家族の財産が大きく変動する時に相続の2文字が脳裏をよぎる方も多いでしょう。そこで、今回の記事は「何歳から相続を考えるか」をテーマに、相続人の平均年齢などのデータから適切な時期を解説します。円満な相続を迎えるためにも、ぜひご一読ください。
相続人の平均年齢とは|平均寿命から親の財産を相続する時期を分析
相続の経験は、親が亡くなった時に初めて経験する方が多いとされています。そこで、この章では相続人の平均年齢のデータをもとに、親の財産を相続する時期を分析します。
親が亡くなる時期とは|子の相続時の年齢も解説
高齢化社会の日本では、多くの方が退職を迎える60代であっても元気な方が多く、子から見ると親はまだまだ健在のように感じるでしょう。厚生労働省が発表している令和5年度の簡易生命表を参考にすると、日本の男性と女性の平均寿命は以下です。
- 男性の平均寿命 81.09歳
- 女性の平均寿命 87.14歳
つまり、親が80代に入ってくるとお亡くなりになる可能性が高く、その子が相続を迎えることになります。
では、子は何歳の時に相続を経験するのでしょうか。第一生命のシンクタンク「第一生命研究所」が分析した2007年発表の「中高年の遺産相続に関する調査」を参考にすると、父親死亡時の相続人の平均年齢は39.1歳であり、母親死亡時の平均年齢は46.4歳とされています。この頃より平均寿命は長くなっており、父親の相続を40代前半、母親の相続を50代に迫る時期に迎えやすいと考えられます。
参考URL
厚生労働省 令和5年簡易生命表(男) 令和5年簡易生命表(女)
第一生命 2007年1月「中高年者の遺産相続に関する調査」
老老相続とは|問題点の解説
相続については平均寿命どおりに起きるわけではなく、相続人自身も高齢になってから迎えるケースも少なくありません。
老老相続とは、高齢者の被相続人の財産を、同じく高齢者の相続人が相続することを意味します。平均寿命よりも長生きされる方は多く、たとえば90代の親の財産を70代の子が相続するケースも決して珍しくありません。このようなケースでは、子も相続後まもなくして亡くなることがあり、「相次相続」が発生することがあります。
相次相続とは最初の相続手続きの完了後、すぐに次の相続が起きることを意味します。老老相続の場合、親の財産に発生した相続税を支払った後に子が亡くなってしまい、相次ぐ相続税の発生で子の相続人の負担が大きくなる可能性があるのです。
また、高齢の親の片方が亡くなり、その直後にもう片方の親が亡くなる「二次相続」で相続税や相続手続きに悩まされる方もいます。(※)
相続税は原則として現金で納める必要があり、どのように資金を用意するべきか頭を抱える方も少なくないのです。生前から家族が協力し合って対策を進めておくことが望ましいでしょう。
(※)相次の前に発生した相続は一次相続、その次に発生した相続を二次相続と呼びます。
成人年齢の民法改正にも注意が必要
老老相続以外にも、相続時に押さえておきたい注意点があります。それは成人年齢の民法改正です。2022年4月1日に民法が改正されたことをご存知でしょうか。成人年齢が20歳から18歳に引き下げられたことによって、18歳以上の相続人は単独で遺産分割協議に参加できるようになりました。高校生であっても18歳であれば遺産分割協議に参加できます。
まだ財産に関する知識を深く持たない若年層が相続人となることも予想されるため、相続には生前から家族揃っての準備が欠かせないのです。
遺産相続の平均額はいくら?
相続を迎えた時、遺産の総額によっては相続税が発生するため、親の遺産がいくらなのか気になっている方も多いでしょう。そこで、この章では遺産相続時の平均額についてデータを基に詳しく解説します。
遺産相続の平均額は2,000万~3000万程度
遺産相続の平均額は、おおよそ2,000万~3,000万程度と考えられます。
2020年にMUFG資産形成研究所(三菱UFJフィナンシャル・グループ)が実施した「退職前後世代が経験した資産承継に関する実態調査」を参考にすると、相続財産の平均額と中央値は以下です。
- 遺産平均額は約3,273万円
- 中央値は1,600万円
このデータは相続経験者の50代~60代、5,838名対象に行われたもので、平均額と中央値に数字の開きがあります。差が生まれる理由には、高額の遺産を相続した方の声も含まれていると考えられます。
参考URL MUFG資産形成研究所「退職前後世代が経験した資産承継に関する実態調査」
東京都・埼玉県・茨城県の相続時における特徴は?
2021年に同じくMUFG資産形成研究所が発表した「退職前後世代が経験した資産承継に
関する実態調査全国47都道府県レポート」を参考に、東京都・埼玉県・茨城県の相続の特徴を簡潔にまとめます。
① 【東京都の特徴】
- 親から自身が相続した財産平均額が5,469万円であり全国上位1位
- 親の住まいまでのおおよその移動時間『30分以上1時間未満』が最も多い
参考URL MUFG資産形成研究所 退職前後世代が経験した資産承継に関する実態調査全国47都道府県レポート【東京都の特徴】
② 【埼玉県の特徴】
- 親から自身が相続した財産平均額が4,121万円であり全国上位3位。
- 遺産の平均額は7,537万円で全国4位であり、親とは同居もしくは移動距離30分未満の方が過半数を占める。
参考URL MUFG資産形成研究所 退職前後世代が経験した資産承継に関する実態調査全
国47都道府県レポート【埼玉県の特徴】
③ 【茨城県の特徴】
- 親から自身が相続した財産平均額は3,384万円、相続した不動産の活用方法で「居住した」が全国上位2位。
- 親子のコミュニケーション頻度で「週に2~3回以上」が5割超であり全国上位4位。
参考URL MUFG資産形成研究所 退職前後世代が経験した資産承継に関する実態調査全国47都道府県レポート【茨城県の特徴】
40代になったら親と相続の話を始めよう!
子が中高年層に差し掛かる40代以降は、親の相続を経験する方が増えていきます。そのため、40代に入ったら親子仲良く、相続をどうするか話し合っておくことがおすすめです。
東京都・埼玉県・茨城県の各相続の特徴では、親との移動距離が1時間未満、もしくは同居である傾向が高く、普段から顔を合わせやすい傾向があると言えるでしょう。
一方で、都内や関東近郊は地方出身者も多く、親の居住地域と離れている方も少なくありません。冠婚葬祭や年末年始、お盆などで顔を合わせる機会があったら、話し合いを持てるように子から親へ声をかけてみてはいかがでしょうか。
相続は話し合っておくことで、以下に挙げるトラブルを回避できる可能性が高くなります。
■生前に相続で話し合う時のポイント例
- 親の意向をまずは丁寧にヒアリングする
- 空き家や管理が難しくなる不動産がある場合は、売却なども視野に話し合っておく
- 現在疎遠の家族が将来相続人になる場合、連絡方法などを確認しておく
- 遺言書の有無(親が作っているかどうか)
- 子が知らない遺産か確認する
相続トラブルは増加中|弁護士へ気軽にご相談を
相続は実際に迎えた時に、トラブルが発生するケースも少なくありません。
■相続トラブルの一例
- 遺産の分け方で相続人間が衝突する
- 親の同居していた子が、介護や扶養の苦労をめぐって財産を多く欲しいと主張する
- 親と非同居だった子が、実家を欲しいと主張する
- 知らない相続人がおり、話し合いが進まない
- 納得できない内容が書かれた遺言書が出てきた
まとめ
本記事では「何歳から相続を考える?」をテーマに、老老相続などの問題点や遺産総額の平均などを詳しく解説しました。相続は誰もが経験する可能性があり、できる限り早くから家族で話し合っておくことがおすすめです。特に40代以降は親の相続を経験することが多くなるため、仲良く話し合いを重ねることが望ましいでしょう。
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